掲載誌名:DODA
日付:2001年7月18日

タイトル:人生の転機は20代後半


好きだからやれる仕事を早く見出そう

大世界にふれて切望した自分が主役の人生

「まずターニングポイントから話しましょう。」のっけから近藤さんは核心に入った。それだけ彼の中で、その出来事が大きなものだったことの証左になるだろう。時は'94年から'96年の間。日本興業銀行に勤務していた近藤さんは、社費で米国にMBA留学するチャンスを得た。
「ビジネススクールで、世界中から集まってきた連中と出会うまでは、サラリーマン生活に疑問を感じたことはありませんでした。しかし連中はみんな自分の夢やをはっきり持っていて、ボクに聞いてくるんですよ。“おまえの夢はなんだ”と。ボクはその質問に答えるがことができませんでした。」
興銀での仕事に不満があったわけではない。しかし夢を語る仲間から受けた衝撃は、あまりにも大きかった。「彼らと出会って、自分が主役になって本気でやりたいことをやろう、という気持ちになりました。」
そのとき近藤さんは、世間や周囲の評価軸に合わせて生きるのをやめ、自分の価値基準を明確に揚げて生きる方向にシフトしはじめた。彼が最も好む言葉。“オンリーワン”への出発だ。
「でも帰国して20代が終わるまで、結局オンリーワンを見つけられなかった。退職を決めたのは、相場の神様と言われた祖父の書いた本を久しぶりに読み返したのがきっかけでした。」
それは投機について説いた本だったが、近藤さんを突き動かしたのは、金儲けのハウツーの奥にある祖父の哲学、生き方論だった。時はまさに金融不祥事の嵐。「自分たちは社会で正しいことをしてきたはずなのに、社会に対して何も価値を生んでいないのはなぜだろう、と思った。そして哲学が不在であることにきづいたのです。」

好きだからやれる仕事を早く見出そう

近藤さんは祖父の哲学を通じて、自分のオンリーワンを見出していく。新しい価値観や生き方をメッセージする出版社の設立が、そのための第一歩だった。こうして30代がスタート、そして既成概念を打ち破るアイデアを次々と敢行。現在は出版社という枠を取り払い、まさしくオンリーワンと呼ぶにふさわしい事業活動を展開している。
「ルーティンワークで済んだ時代は、嫌いな仕事を耐えながらやっても成果を出せました。でも新しい価値の創造を求められる今は、好きでやっているやつには勝てません。周囲の評価に左右されながらナンバーワンを目指しても、何も生まれないし、楽しくもない。今やオンリーワンを目指し、クリエイティブな面を仕事に活かさなければ生き残れません」ナンバーワンよりオンリーワン。これが20代の読者たちに贈る近藤さんからのメッセージだ。レゾナンスは今、社員それぞれのオンリーワンが充分に活かされるような体制にしているという。「オンリーワンがあっても、従来型の組織や制度ではその能力を発揮することはできません。人事、制度など、好きなことをできる体制を整えていきます」

● 20代へのアドバイス

夢中になっている間に日が暮れてしまった...。そんな体験の中に、好きな仕事を見つけるヒントがあります。仮に釣りが好きなら、釣りをしている中で一番エキサイティングな瞬間を考えてみる。たとえば勘を働かせて“読む”行為が好きな人は、読みを求められる仕事の面白さに気づくかも。趣味はコレ、といった表面に出ていることの中に隠された、自分を動機づけている本質の部分を探ってほしい。

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