掲載誌名:ベンチャークラブ
日付:2001年2月号

タイトル:起業家にみる情報整理術


レゾナンス社長 近藤正純ロバート Robert Masazumi Kondoh
高校時代から続けているカード方式が情報整理の秘策 

出版を核にさまざまなビジネスを展開しているレゾナンス社長の近藤正純ロバート氏。朝食をとりながら日経新聞、日経産業新聞に目を通し、必要な記事に星印をつけるのが日課だ。企業にマーケティングの提案をしているので、気になった会社にはすぐにアポイントを入れたい。会社につくと、星印の付いた新聞を担当者に渡してメールを送ってもらう。「今はメールが効果的ですね。新聞を見たと書いて出すと、アポが取りやすい。メールだと用件もしっかり書き込めますから」
 iモードの広告の仕事をしたときは、この方法が功を奏したという。
 通勤途中にも情報収集・整理は続く。iモードに毎日登場してくる新しいサイトをチェックする。歩きながらアイデアが浮かべば、携帯電話にメモする。なんと手帳を持っていないのだ。スケジュールもすべて秘書まかせである。

   気に入っている雑誌は英語版の『エコノミスト』。キャッチーな話題を、ある程度メドがついた段階でしっかりまとめて読ませてくれるからだ。分析も深い。ああ、こういうことなのかと納得がいく。
 いい記事でも、雑誌や新聞は保存しない。実は高校生のときから続けている秘策がある。一枚のカードに、エッセンスを一つだけ書くというカード方式。面白いと思ったことを、ジャンルにかかわらず書いて箱にしまっておく。時間のあるときに、カードを無作為に取り出して広げてみると、「これとこれがつながる」というように、意外な組み合わせが生まれる。
「記事を保存することより、この記事のポイントは何かを考える方がずっと重要。思考のトレーニングにもなります。考えてそのポイントが新しいと思ったらカードに書く。そういう積み重ねからインスピレーションが湧いてくるんです」

   何年か前に書いたカードを見ると、自分の成長を確認できるという。
 本からの情報も同じ方式で整理する。近藤氏は、週に二冊というノルマを自分に課している。三分の一は英語の本。今よく読んでいるのは複雑系の本だ。大切なページに星印を付けていくと、一冊で10個くらいになる。後で本を開くときは、そこだけ見ればいい。星印の中でも特に重要なところは、カードに書く。大切な所を残して、いらない大部分はバッサリ捨てるわけだ。

   新聞も本も読むけれど、近藤氏がいちばん大切にしているのは人からの情報だという。気になる記事があると、書いた記者に直接電話をして「本当のところどうなの?」と話を聞く。BBCなど外国メディアの記者ともネットワークができている。
「情報の広がりが全然違います。経営で悩んだときも、留学先で知り合った海外の友人たちにメールを出します。『そんなの簡単だよ、こうだろう』って、日本とは違う発想で解決方法をを出してくれるんですよ。貴重ですね」
 デジタルの力借りつつも本質的にはアナログ。この組み合わせが近藤さんの整理術だ。(フリーライター・仲宇佐ゆり)

PROFILE
1988年慶応義塾大学経済学部卒業後、日本興業銀行入行。在職中に米国コーネル大学経営大学院に留学(MBA取得)。98年レゾナンス出版(現・レゾナンス)を設立し、代表取締役社長に就任。興銀時代の同期に楽天社長の三木谷浩史氏がいる。大型バイクで飛ばすことが目下、息抜きの一つ。

<写真キャプション>
●書きやすい手作りの万年筆、キャステルのシャープペンシルを愛用。電子辞書はカシオのXD-2000。D502iについている白クマは北海道で購入。クマ好きで、机の上にも隣の席にもクマが座っている。

●訪問先の会社のサイトは事前にチェック。地図、関連資料とともに秘書にまとめておいてもらう

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