掲載誌名:繊研新聞
日付:2000年7月18日

タイトル:限定客に複合メディアで“ディープ情報”発信


限定客に複合メディアで“ディープ情報”発信
原宿・渋谷のカリスマ雑誌33誌、衣料店・美容院など350店が参加

情報媒体「トーキョー・ジャミン」
売りに結びつける読者、買い手とのコミュニティー


ディープな情報を複合メディアで発信して限定客の市場を創造する試みが東京の原宿・渋谷でスタートした。参加しているのは渋谷・原宿の衣料専門店、雑貨・小物店、美容院など三百五十店と熱狂的な読者をかける“カリスマ雑誌”三十三誌。それらの情報を束ねた独自の情報誌を発行したほか、共同でウェブサイトを開設 してショッピングモールを立ち上げた。FM放送の深夜も使い、「共通する価値観を徹底的に掘り下げ、読者、買い手とのコミュニティーが発展することによって売りに結びつける」ことをめざす。年末までに参加店舗千店を予定する。

情報媒体は「トーキョー・ジャミン」。原宿・渋谷の店長や編集者、クリエーターが発信する「超私的情報」満載の情報マガジンを掲げる。インターネットのサイト名は「ジャミン・シティー」(http://www.jammin.ne.jp)。紹介店舗のエリアが限定されているため、アクセスすると街を散策するのと同じように地図を路地をたどって店を発見し、商品を購入することもできる。

また参加店舗と雑誌の連動による商品開発やイベントの開催、編集者や店長への質問なども可能で、情報や人のつながりに商品も載せた広がりを期待し、「最先端情報がナビゲートする都市型サイト」をめざす。いずれも六月下旬にスタートした。FMラジオは「神宮前カルチャー」を発信する「ジャミン・ストリート」。J-WAVEで午前二時から連日放送中だ。

雑誌(印刷)、電波、インターネットと店舗をつなげる今回の試みは、中小出版巣阿の経営支援会社、レゾナンス(本社東京、近藤正純ロバート社長)が進めている雑誌編集部やコンテンツ・クリエーターに対する支援事業から発展した。

編集以外の業務を引き受けた出版社が広がる中gで共同サイトの話が持ち上がり、ショッピングモールの開設、さらにショップの参加へと広がっていった。

レゾナンスは今回のサイトで、運営に携わるほか、日本通運と提携して商品配送を担当する。また各店に在庫管理システムを導入してリアルタイムの在庫状況を提供し、同社はショッピングモールによる売り上げ増の二〇%を運営費などとして受け取る。

価値観を徹底的に掘り下げ

レゾナンス 高畑龍一副社長の話
日本の生活者はいま、職場、家庭、学校、地域社会の崩壊に直面し、帰属できるコミュニティーを失い、個人のアイデンティティーも薄れつつある。行き場のない消費者は同じ価値観を持った人に生活(価値観)のナビゲーターを求め、やがてコミュニティーを作り上げる。そうした変化はすでに提供者側からの機能性一点ばりや低価格訴求型の商品開発やばく然としたボリューム市場をねらった大手企業の広告が上滑りしていることに表れている。

これからの購入行動は心理的距離半径三千メートルの身近差を感じる複数のナビゲーターの意見(価値観)を比べながらアナログとデジタル、バーチャルとリアルを併用するパターンになると思う。トーキョー・ジャミンは市場開拓の新しいかたちとして、ファッションやカルチャーのオピニオンリーダーと消費者が複合メディアを使って直接、交流し、買い物もできる仕組みに挑戦する。