掲載誌名:広告批評
日付:2000年6月号 No.239

タイトル:カルチャー・マガジン、ネットに集合する。


カルチャー・マガジン、ネットに集合する。

新しいネット・ビジネスが毎日のように経済欄を賑わしているが、この夏、若者向けのコアな情報を扱う、サブカルチャー色の強いモールが生まれる。個性派の雑誌と若者に人気の街の情報をネット上でリンクさせた仮想空間。この街から、どんな新しい文化やビジネスが生まれてくるのだろうか。

カルチャー雑誌とか、リトルマガジンとか呼ばれる、作り手の主義や個性を活かした雑誌が集まって、ネット上でコンテンツの紹介や販売を行う--そんな試みが七月に立ち上がろうとしている。

サイトを運営するのは中小出版社の経営支援や版権管理を手掛けるレゾナンス。サイト名を「Jammin' City(ジャミン・シティ)」という。(http://www.jammin.ne.jp) 現在、「TOKION」「dish」「米国音楽」「GQ Japan」「Colors」など二十一誌が“出店”しているが、この仮想シティに参加しているのは、雑誌ばかりではない。渋谷・原宿に実際に立地するする人気のブティック、雑貨屋、美容院など三百五十店とも提携。ウェッブ上に人気の商品情報を提供したり、商品を実際に購入することも可能だ。

サイトでは渋谷・原宿界隈を再現した地図をたどりながら、ショッピング感覚で散策できるようになっていて、ショップの数も年末には千店を目指すという。そうなると、もう一つの渋谷・原宿がネット上に再現されることになるだろう。

こうした雑誌やショップは、これまで発行部数や販売規模も小さく、流通 も大都市中心にならざるをえず、また単独店舗でEコマースを立ち上げようにも、商品管理や販売の手間を考えると、導入に躊躇するところも少なくなかった。今回、独自の視点とこだわりを持った者同士が、ネットを通 じて横のつながりを持つことで、管理の煩わしさを解消し、その一方でファッション性の高い雑誌媒体と連動して、商品開発を手掛けたり、チャットを通 じてオーナーや編集者と直接情報交換できるようにもなる。人と情報の流動にも一役買うことになりそうだ。

この試みで面白いのは、従来の仮想空間型のモールと違い、出店する店舗を渋谷・原宿という、現実の街に限定している点だろう。さまざまな情報が流入し、流行を発信しつづけるこの街は、そのまま強力な広告メディアでもある。それがネットに場所を移した時、全国の若者たちがどういう反応を示すのか興味深い。

ジャミン・シティは、ウェブと並行して、「Tokyo Jammin'」という情報誌を創刊するという。また、J-WAVEでは、深夜の時間帯に「神宮前カルチャー」をテーマにした番組もON AIR中である。ウェッブ、印刷、電波と、メディアを横断しながら流行がどう広がり、どう迎えられるのか。ジャミン・シティの試みは、これからの若者文化と今後のネット・ビジネスを占う試金石と言えるのかもしれない。

<写真キャプション>
ベネトンが発行する「Colors」(右)と、「A」のページ(下)。雑誌内の数頁が閲覧できるほか、バックナンバーの販売なども行っている。

中吊り広告模した雑誌モールの入り口(右)。取り扱い雑誌はビジュアルが主体の大判雑誌が多いが、「広告批評」の顔も見える。

カルチャー誌を横断しての広告プロモーションなども行われている。これらはiモード(NTTドコモ)が参加誌の表4をジャックした例。ロゴと企業スローガンの使用以外は、一切制約を設けず、各雑誌のADが自由にデザインを行うことで、それぞれの読者の感覚に近いヴィジュアルが制作可能となった。