掲載誌名:ベンチャークラブ
日付:1999年12月号

タイトル:21世紀を支える日本の起業家101


<出版>編集プロダクションを支える新事業に挑戦
34歳 近藤正純ロバート
デジタルコンテンツビジネスをリードしていく存在になる

レゾナンス出版の近藤正純ロバート社長は、今「出版界のパラダイムを変える」新しい試みに挑戦している。

1999年8月から始めた「パブリッシャーズ・クラブ」事業は、付加価値の高いコンテンツをつくる能力がある中小の編集プロダクションがほかのことに煩わされずにコンテンツ制作に専念できる環境を提供しようとしている。すなわち、資金調達、経理、マーケティング、広告宣伝などのサポート業務をレゾナンス出版が代行し、「本質的に付加価値を生んでいる人におカネが行く仕組みをつくりたい」。

たとえば「クラブカルチャー系雑誌」には、若者向けのクラブで今何が流行っているのか、広告代理店やメーカーにとって新商品開発やマーケティングのヒントが詰まっている。しかし、「茶髪・ピアス」の編集者たちには、大企業に出向いて自分たちの雑誌を売り込んだり、広告を取ろうという発想はない。近藤氏をはじめ大企業出身者の多いレゾナンス出版がそれをつなごうというわけだ。例えばの話、その雑誌のセンス、切り口で1冊丸ごと「マクドナルド特集」を組むことも考えられる。

「パブリッシャーズクラブ」の契約企業は10月現在30社年内に50社、「2000年末までには150〜200社と契約したい」。150社と契約すれば、発行点数は月間70〜80点と大手出版社並みになると見込む。

さらにコンテンツの2次利用として、レゾナンス出版では無料コンテンツサイト、フォーラムをつくる。読者には、コンテンツを無料で見て、それに対する意見、感想をチャットしてもらう。チャットの内容は、スポンサー企業がマーケティングに利用するというものだ。このような形で、近藤は「デジタルコンテンツビジネスをリードする新業態」を目指している。

日本興業銀行から米国のビジネススクールに留学して MBA取得。絵に描いたようなエリートコースを歩んできた近藤氏は、祖父の本を出版する目的で1997年11月末に興銀を退職した。祖父とは、株の世界で有名な「一目均衡表」の発案者、一目山人だ。「こんな時代だからこそ財産形成の基本や人生哲学まで盛り込まれた祖父の著書の現代版を出したい」との思いだった。

同じ興銀出身の高畑龍一氏と「どうせなら面白い人たちのメッセージをプロデュースしよう」と意気投合。
98年3月にレゾナンス出版を設立した。レゾナンス出版自身は、これまでに島田晴雄慶大教授とマキノ正幸・沖縄アクターズスクールの共著『オンリーワン』(2万5000部)など「きっちり1万部以上をこなす」単行本を月に1.2点ペースで発行している。

1965年米国サンフランシスコ生まれ。88年慶応大学経済学部卒業後、日本興業銀行入行。96年コーネル大学大学院ビジネススクールでMBA取得。97年11月興銀を退職。プロメシアス研究所の子会社として、98年3月にレゾナンス出版を設立。売り上げに応じて利益還元する「ブックファンド」を設定、2年満期で4000万円の資金を調達。99年8月から「パブリッシャーズクラブ」事業を開始、出版編集プロダクションの資金調達、マーケティングなどの業務を受託。99年12月期売上高2億円見込み。