掲載誌名:ベンチャークラブ
日付:1999年4月
タイトル:大転換期だから面 白い人たちの情報発信をします

私が起業に目覚めた瞬間:金融不祥事

大転換期だから面白い人たちの情報発信をします


興銀マンで、米国のビジネススクールでMBAを取得。絵に描いたようなエリートコースを歩んできた近藤正純ロバート氏が出版ベンチャー起業家に転身する最初の契機は留学時代にあった。

世界中から集まった友人たちと話をすると「日本興業銀行」といっても通 じない。「君は銀行の仕事が好きなのか」「銀行で何がやりたいのか」。そのときは、一応もっともらしい答えを言おうとしたが、「自分は銀行員になりたかったわけではない」「大企業に勤めるのがいいと思っていただけ」「人から与えられた価値観で選択してきた」と改めて気づいた。

そのころ金融不祥事が相次ぎ、銀行の「権威」や「信用」は失墜、「尾上縫事件」に翻弄された興銀も例外ではなかった。帰国した近藤氏は、「こんな時代だからこそ、財産形成の基本や人生哲学まで盛り込まれた祖父の著書の現代版を出したい」との思いを強くする。祖父とは、株の世界で有名な「一目均衡表」の発案者、一目山人だ。

祖父の本を出版する目的で1997年11月末に興銀を退職した近藤氏は、同じ興銀出身の高畑龍一氏と議論し、「金融のみならず、日本全体が価値観の大転換期を迎えている」「どうせなら面 白い人たちのメッセージをプロデュースする仕事をしよう」と意気投合。

98年3月にレゾナンス出版を設立し、99年1月末までに4点を発行した。「2つの異色ものをぶつけて新しいメッセージを発信、クロスメディア戦略でプロモーションを行う」のが同社の手法だ。

『オンリーワン』は、島田晴雄・慶大教授とマキノ正幸・沖縄アクターズスクール学校長の共著で、発売日には八重洲ブックセンターでコンサートを開催した。

また、売り上げに応じて利益還元する「ブックファンド」を設定、2年満期で4000万円の資金を調達したのも異色の試みだ。

「ベンチャー事業では、非常識な発想ほど成功の可能性が高い」。 近藤氏は「好き」「楽しい」「自分がやりたい」の3つをキーワードに前進すると決めている。