掲載誌名:Money Japan
日付:1999年2月
タイトル:年利14%!?の出版ファンド登場

年利14%以上を達成できるか。 新ファンドの実績は本の売り上げが決める。

元銀行マンが、出版物に投資する新型ファンドを募集した。2カ月で4000万を集めた出版ファンドとは?

競走馬の1口馬主から映画ファンド、さらにミュージシャンの印税収入を担保にしたデビット・ボウイ債権まで、およそ金融とはかけ離れた分野にも投資商品は存在する。だが、まさか書籍がらみのファンドまで登場するとは、特に出版業界の人間には想像もつかなかっただろう。毎年、必ずベストセラーは登場するが、それはほんの一握りで、"出版は儲からない"のが業界の常識。これを覆したのが98年3月に設立されたばかりのレゾナンス出版である。

わずか2ヶ月間で、4000万円を調達!

社長の近藤正純ロバート氏は日本興業銀行出身。元講談社の1人を除き、設立メンバーはいずれも出版に関して素人だ。しかし、処女作『成功術X(エックス)で行こう』(安生浩太郎著)はいきなり東京都内の大型書店でベストセラーに。2冊目の教育書『オンリーワン』(島田晴雄慶応大学教授・マキノ正幸沖縄アクターズスクール校長共著)を出す際、出版ファンドを思いついた。

「1冊目を出して、出版業界の仕組みはだいたい分かった。ほとんどの中小出版社は本をつくることだけで精いっぱいで、売るための予算がない。まして、設立したばかりの会社に銀行が融資するはずがないことは自分が一番よく知っていた」(近藤氏)

そこで、資金調達の手段として匿名投資組合方式の出版ファンドを組み、投資家から資金を募ったわけだ。2年間で4冊の書籍を出し、その利益を出資比率に応じて投資家に還元する仕組み。98年5月から1口500万円で募集を開始し、6月末には4000万円が集まった。

個人投資家からも週に最大150件もの問い合わせがあったが、「一切断り、紙問屋や印刷会社などの出版関連業者からの投資に限った」という。

「1冊平均3万部売れたら年利配当14%」という試算だけに目を奪われ、「出版ファンドのリスクをきちんと理解してもらえるかが不安だった」からだ。ただし、当然ながら近藤氏は年利14%よりも上を狙っており、その自身もあるそうだ。

雑誌創刊時には、再びファンド募集も?

もっとも、近藤氏らは刊行後の営業活動も型破りだった。 「従来の出版社の書店営業は、本を置いてほしいとお願いするだけ。だから、われわれは提案営業を行った。たとえば、資格本のコーナーに"日本の公認会計士はもう使えない!?" という挑発的なPOP(店頭広告)を飾る。すると、ドキッとした客は、目当ての資格本とウチの本の2冊を買い、客単価が上がるのではないかと・・・」(近藤氏)

リスクを充分に理解したうえで投資したいと思った人もいるだろう。だが、残念ながら途中参加は不可。「当初からリスクをとって参加している投資家にフェアでない」ためだ。ただし、同社は雑誌の創刊も検討中。

その際は1口5万〜10万円で、再びファンド化の可能性もある。