掲載誌名:仕事の教室
日付:1998年12月
タイトル:出版界の常識に当選する元興銀マン

近藤正純ロバート
「異業種からの転身はある意味非常識を持ち込むこと。それが業界を活性化させる」

出版界の常識に挑戦する元興銀マン

沖縄アクターズスクールのマキノ正幸校長と、慶應大の島田晴雄教授がユニークな教育論を展開する「オンリーワン」という本が話題だ。手がけたのはレゾナンス出版。元興銀マンの近藤正純ロバートさんを代表に、3月に設立された会社だ。"2年間で4冊の本を出版し、実売3万部で年14%の利回り"という見通 しで投資家から4000万円の資金を集めた。

「会社ではなくプロジェクトに対して投資する『ファンド』の方式です。ハイリスク・ハイリターンですが、結果 が出るのが早くてわかりやすいから投資しやすい。金融業界では当たり前のこのやり方が、出版界では初だったんです。これだけの貸し渋り時代に、異業種から飛び込んだことが逆に強みになった」

型破りなのは資金面だけではない。本の制作は、著者・編集・カメラマン・営業・デザイナーらをひとつのプロジェクトにまとめ、それぞれと個人契約を結んで歩合制で報酬を払う方式。宣伝面 では、八重洲ブックセンターでアクターズスクールのタレントによるイベントを行い、それをインターネットで同時中継するなどのクロスメディア戦略。営業面 では、大型書店の各売り場ごとに違うポップを提案して、より多くの売り場で平積みにしてもらう作戦(これは学生のアイデアだという)。

「11月までに6〜7冊出します。今後も、生き方へのユニークなメッセージを持った人の著作を、有名、無名問わず出していきたい」

●近藤正純ロバート● 1965年生まれ。'88年慶應大学卒業後、「株の神様」といわれた祖父・一目山人の影響もあり、金融界を志して興銀に入社。'94年、会社からの派遣でMBAを取得するために留学した米国コーネル大学でさまざまな生き方を目にし、「自分の本当に好きなことは何か」を考える。'96年帰国後、興銀を退行、'98 年広く新しい価値観を紹介していくためレゾナンス出版を設立。