掲載誌名:PRINTERS CIRCLE
日付:1998年10月
タイトル:他業界から積極的に学ぶことが成功の秘訣

他業界から積極的に学ぶことが成功の秘訣
出版界に新風を吹き込むレゾナンス出版

「作りたい本があったから出版社を作った」。不況の影響が色濃い出版業界にあえて飛び込み、型破りな出版で旋風を起こしている若者がいる。高橋歩さん(26)と近藤正純ロバートさん(33)だ。先日、相前後して札幌を訪れた2人に、その経緯を聞いた。

近藤正純ロバートさん レゾナンス出版
時代の「共鳴」誘う


日本興業銀行を昨年11月に退社、レゾナンス出版を興した。今年4月に出した初の単行本、安生浩太郎著「成功術X(エックス)で行こう」がベストセラーになった。2冊目は沖縄アクターズスクールのマキノ正幸校長らの対論集「オンリー・ワン」。

慶応大から興銀へ。「銀行員になりたくてしようがなかった。必死に働けば幸せになれる、と教えられた価値観で生きてきた」。ところが、1996年5月までの米国留学で「町で働くおじさんが、とても自由で伸び伸びと生きていた」のに触れて気持ちが揺らいだ。銀行不祥事が相次いだことも重なり、退社に踏み切った。

祖父が、株式チャート分析で知られる一目山人「じいさんの教えは人生における財産形成のあり方、人生哲学を語っている。価値観が崩壊している現代にそのメッセージを伝えたかった」。いくつかの企画を出版社に持ち込んだが、「千部買い取るなら出してもいい」「写 真を入れると原価が高くなるので無理」などと言われ、望み通りの本はできそうもなかったため、出版社設立を決意した。

社名のレゾナンスは「共鳴」の意味。文字通りその活動に共鳴して、ボランティアのお手伝いから社員になった人もいる。同じ意味で投資家にも資金協力してもらう共鳴者を探す、新しい発想の「出版ファンド」も立ち上げた。

「不況の時にまったく知らない業界に飛び込んでくるのは珍しい」と言われた。「でも出版は1つの形。コンテンツ(内容)が問題なので、雑誌もテレビ番組も、できればチャンネルも持ちたい。媒体を横に広げたい。」と、どん欲さものぞかせている。