掲載誌名:リクルートキャリアガイダンス
日付:1998年9月
タイトル:新しい価値観を伝えたいと「今までにない出版社」を設立

新しい価値観を伝えたいと「今までにない出版社」を設立
レゾナンス出版 代表取締役 近藤正純ロバートさん(33歳)

今、悩み病んでいる「日本」に新しい価値観を伝えたい

「僕の祖父は『株の神様』一目山人と呼ばれた人で、いつかは3世にと金融業界に入りました。銀行の仕事は面 白かったんですが、コーネル大でMBAを取得し、留学から帰ってみると、日本は証券不況の真っ只中、倫理的な問題も数多く抱えていた。それで、コレは祖父の著書である『一目均衡表』の現代版を世に出すのが、僕の使命だ、と。出版業に入ったのは、これが始まりでした」

『一目均衡表』とは、半分が株の技術論で、残りは株を極めた男の人生哲学といった内容だ。その出版が、少し道を外し始めた証券業界を救う一助になるのではと考えたという。

しかし、会社を辞めたら、証券業界だけでなく、日本という国そのものの既存の価値観が崩壊する大転換時代に突入していることを感じた。

「一生懸命勉強し、いい大学に入って、いい会社に入れば幸せになれる」という高度成長期から続く神話がぐらつき始めたものの、それではどうすれば幸せになれるのかが見えてこないことに危機感を覚えたのだ。

「新しい価値観を発信しなければ、と思った。また、外に出て、一目山人以外にもすばらしいことを言っている人の存在も知った。だからその文化人、知識人を集めてプロダクションを作りたいと考えたのです」

1日20時間働いても楽しくて仕方がない

同社は設立以来、出版のための資金を投資家から集めるブックファンドを設立、2冊目の出版物「ONLY ONE」(島田晴雄氏、マキノ正幸氏共著)の発売記念として著者トークショー、 B・B・WAVESのミニコンサート開催など、話題にはことかかない。しかしこれらは奇をてらったわけでなく、同社のコンセプト「21世紀の指針となるべきメッセージを発信していく出版社」に基づく計算された戦略だ。

「極論をいえば、僕たちの目的は本の出版ではなく、社会にうねりをおこすこと。だから本を作る前からクロスメディア展開を視野にいれるし、ブックファンドもその作り込みに必要な資金を安定して供給するための手段というえわけです」

近藤さんは1日20時間働く。それでも楽しくて仕方ないという。

「僕が本作りで発見したことは、モノを作ることが好きだということで、僕が見つけた『オンリーワン』なんです。自分が好きなことを見つけて、それに打ち込むことの幸せは、僕がよく知っている。今の日本は不況、不況といっても、人類史2万年の中で、好きなことをやっても食って生ける唯一の時代であり場所だと思う。それだったら好きなことをやったほうがいいじゃないかという発信を続けていきたいですね」