掲載誌名:夕刊フジ
日付:1998年8月18日
タイトル:出版界の若き風雲児

興銀マンから転身 出版界の若き風雲児

近藤正純ロバート(33)異色の教育対談本ベストセラーに

金融界の崩壊を目の当たりにした33歳の元興銀マンが、会社を飛び出しておこした小さな出版社から先月、発売された異色の教育論がベストセラーを続けている。

歌手の安室奈美恵らを輩出した沖縄アクターズスクールの校長、マキノ正幸氏(57)と、政財界で活躍する国際エコノミストの島田晴雄氏(55)が教育を論じ合う対談本『オンリーワン』、初版だけで2万部突破。この社長は、早くも出版界の風雲児として注目を集めている。

編集者ら4人で

この出版社は、昨年11月、日本興業銀行を退職した近藤正純ロバート氏(33)が設立した「レゾナンス出版」(東京・虎ノ門)。近藤氏は米国生まれで、慶応大卒業後、興銀に入行。在職中に米国の大学院でMBA(経営学修士)を取得するなど絵に描いたようなエリート街道を歩んでいた。

だが、「金融界が激動するなかで、『いい大学、いい会社』という既存の価値観が崩れ、多くの人が、新たな生き方へのメッセージを求めるようになった。それを伝える仕事がしたい」と脱サラを決意。講談社で「ワイルド・スワン」などミリオンセラーを手掛けていた編集者ら4人で今年3月、同社を立ち上げた。

型破りな宣伝

『オンリーワン』は同社が手掛ける2冊目だが、先月の発売に際しては、サラリーマンでにぎわう東京・八重洲の大型書店で、マキノ、島田両著者とともに、沖縄アクターズスクールで、SPEEDの後輩にあたる新人グループ「B・B・WAVES」が参加したタレント本並の型破りなイベントを開いて、業界をアッと言わせた。

"文化人のジャニーズ事務所"

「もともと出版だけにこだわっていない。大学教授の著書や講演をプロデュースする"文化人版のジャニーズ事務所"をやりたかった」と話す近藤氏だが、マキノ氏に執筆を依頼するにあたっては、沖縄アクターズスクールに自ら出かけ、「B・B・WAVES」の練習を入念に下見した。

「見る前は、どうせ子供のやること。つまらなければ(本の話は)やめよう、と思っていた。ところが、ダンスが始まった30秒後には、武者震いしながら真剣に踊る子供たちをみて、涙が流れた。うまいへたを超えた迫力があった」

オンリーワンに

その勢いのまま両著者の語り口調で「ナンバーワンより、オンリーワンを目指す」という教育論を仕上げた。 アイドル本の棚に並べている店もあるが、子供の教育に悩む3、40代の父親に一番売れているという。

祖父は「株価チャート」発案者

◆・・近藤氏の祖父は証券界で"相場の神様"といわれ、日本で広く使われている株価チャート「一目均衡表」の発案者、一目山人氏。「祖父が、株で成功するための人生訓をたくさん残しているので、それをいつか全集として出したい」という夢がある。

そして、「今は、『オンリーワン』のメッセージを『B・B・WAVES』に歌ってもらってCD化できれば、と考えているんです。それをマキノ氏が来春、沖縄に創立する学校の"校歌"にしたいんですよ」と構想をめぐらす。祖父ゆずりの新種の血が騒ぐ?

幻冬舎社長を意識してる!?

◆・・出版界の風雲児といえば、最近では4月に郷ひろみの離婚告白本『ダディ』を初版で50万部刷ってみせた幻冬舎の見城徹社長(47)が浮かぶ。近藤氏は意識しているのだろうか。

「うちでは、売れれば芸能人の浮気でも手掛ける、ということはしたくない。有名、無名にこだわらず、今後も、生き方への強いメッセージを持った方の本を出していきます」と挑戦的で、「次回作は、4、50代の女性が共感できるような女流カメラマンの著書を予定しています」と今後も出版界に新風を吹き込むもくろみだ。